猫に必要な栄養素と手作りごはん

かつて、猫のご飯といえば、九州・西日本では残った米飯に味噌汁をかけた物、関東では残った米飯に鰹節を混ぜた物だったそうですが、それでは栄養が偏って若くしてさまざまな病気が現れます。今日ではキャットフードが、近くのお店でも簡単に手に入るようになりました。キャットフードの種類も増え、我が家の愛猫にどのフードを選べば良いか、迷うほどになりました。ところで、猫にはキャットフードだけ与えていれば良いのでしょうか?それとも、手作りご飯を与えた方がよいのでしょうか?その前に、猫にとって大切な栄養素とはどんな物があるのでしょうか?

  1. 水は最も重要な栄養素です。水分は大人の猫の体重の60%~70%を占めています。
    体内の水分を10%失うと深刻な病気を引き起こす可能性があり、15%失うと死に至ります。
    猫の祖先リビアヤマネコがエジプト発祥のためといわれますが、猫は渇きに強く水をあまり必要としない動物です。言い換えれば、水を飲みたがらない動物ともいえます。そのため泌尿器系の病気になりやすい動物です。泌尿器系の病気を防ぐためにも、できるだけたくさんの水を飲ませることが大切です。食べ物から水分を補給することもできますが、より新鮮できれいな水を飲ませる必要があります。

  2. たんぱく質(アミノ酸)
  3. たんぱく質は、細胞や筋肉、酵素、ホルモンなどの体内組織を作る元になります。
    体の成長や維持、再生及び修復に必須です。猫は、たんぱく質と脂肪を効率よく代謝して、エネルギー源として健康を維持しています。猫には人の5~6倍のたんぱく質が必要です。
    アミノ酸には、「必須アミノ酸」と「非必須アミノ酸」に分類されます。猫の体内で作ることができないアミノ酸を必須アミノ酸と言います。必須アミノ酸は、食事から取る必要があります。不足すると欠乏症になる恐れがあります。
    猫に必要な必須アミノ酸は11種です。
    アルギニン、メチオニン、ヒスチジン、フェニルアラニン、イソロイシン、トレオニン、ロイシン、トリプトファン、リジン、バリン、およびタウリンです。特にアルギニンとタウリンは重要です。猫にアルギニンが不足すると、アンモニア中毒になる恐れがあります。体内の老廃物を排泄する仕組みである尿素サイクルが動かなくなり、窒素化合物を代謝できなくなるためです。アンモニアが血液中に増えていき、高アンモニア血症という状態になり、重症の例では数時間以内に痙攣が始まって死亡することもあります。猫にタウリンが不足するとタウリン欠乏症になります。網膜が冒されて中心性網膜変性となり、失明する可能性があります。猫は、犬と違ってタウリンを合成することができませんから、必ず食事から取る必要があります。タウリンは動物性タンパク質に多く含まれています。

  4. 脂肪(脂肪酸)
  5. 脂肪は、タンパク質と並ぶ重要なエネルギー源であり、皮膚や毛などの構造に必須であり、また腎機能・生殖機能など様々な機能に関与しています。
    猫は、最も必要な「必須脂肪酸」と呼ばれる3種類の脂肪酸(リノール酸・α-リノレン酸・アラギドン酸)を、体内では作れないため食べ物から取る必要があります。必須脂肪酸の欠乏症は、成長の減少と皮膚の問題の増加をもたらす可能性があります。アラギドン酸(オメガ6脂肪酸)もまた、猫には皮膚と被毛の維持のため、腎機能と生殖機能のために、必須です。オメガ6脂肪酸とオメガ3脂肪酸は炎症の治癒に重要な役割を果たします。

  6. ビタミン
  7. ビタミンは、体内の酵素反応のための触媒です。必要とする量はわずかですが、正常な代謝機能のための大切な栄養素です。そのほとんどが、体内で作られないため食事から取る必要があります。とくに猫に必要なビタミンは、ビタミンA・ナイアシン・チアミンです。
    ビタミンAが欠乏すると、眼球乾燥症、運動失調、結膜炎などの障害や、脱毛、皮膚にも悪影響が出ます。ナイアシンが欠乏すると、黒舌病、皮膚、消化器、神経系の障害、潰瘍性壊死の舌炎、口内炎や下痢の症状が出ます。チアミンが欠乏すると、体重の減少や脳に障害が出ます。
    ただし、完全なバランスのとれた食餌(総合栄養食・キャットフード)を与えていれば、特定のビタミン欠乏症を獣医師から診断されていない限り、ビタミンサプリメントは不要です。ビタミン欠乏症よりも、ビタミン過剰症(ビタミン過剰中毒)の方が一般的に多くみられます。ビタミンA過剰は、骨や関節の痛み、脆い骨や乾燥肌、歯肉炎・歯牙消失になることがあります。ビタミンD過剰は、非常に高密度の骨、軟部組織石灰化や関節石灰化をもたらす可能性があります。

  8. ミネラル
  9. カルシウム、リン、カリウム、鉄、マグネシウム、ナトリウムなどの無機化合物です。これらも動物の体内で合成することはできないため食餌から取る必要があります。ミネラルは、体液バランスを維持し、骨や歯、筋肉、血液の構成要素として、また多くの代謝反応への関与のために重要な成分です。
    ミネラルはとても大切な栄養素ですが、ビタミンと同様に特定のミネラルを過剰に摂取した場合や、逆に不足した場合は体に有害となります。

  10. 炭水化物(食物繊維)
  11. 人は炭水化物をエネルギーとして利用しますが、猫は炭水化物の消化・吸収力が弱いため、猫にとって炭水化物は主要な栄養素ではありません。炭水化物は大きく、糖質と食物繊維に分けられます。
    食物繊維は体内の消化酵素では分解されず、そのまま大腸に送られます。食物繊維は不溶性食物繊維と水溶性食物繊維に分けられます。
    不溶性食物繊維は、大腸を刺激して便通を整え、排泄を楽にして便秘を防ぎ、猫が舐めて体内に入った抜け毛の排泄をスムーズにして毛球症を防ぐ効果が期待できます。
    水溶性食物繊維は、腸内の善玉菌を活性化し、コレステロールなどの吸着を防ぎます。

参考:https://www.aspca.org/pet-care

ここにあげた栄養素は特に重要な六大栄養素と呼ばれるものです。こうして見てみると、猫にとって大切な栄養素は人とはかなり違うこと、そしてとても複雑で膨大な知識が必要なことがわかります。食品中の栄養素は、時間の経過や加熱などによって量も質も変化します。キャットフードの原材料への不安から、手作りご飯を選ぶ飼い主さんが増えていると聞きますが、獣医師や動物栄養士でもなければ、これだけの栄養素を、過不足なく摂取できるご飯を、毎日与えることはとても難しいと思います。「総合栄養食」と呼ばれるキャットフードには、猫に必要なほとんどすべての栄養が含まれています。これらのことから、私は、手作りご飯よりも「総合栄養食」のキャットフードを与える方が、猫の健康に良いと考えています。ただし、「総合栄養食」のキャットフードの中には、粗悪な原料を使用したと思われる商品もたくさんあります。大切なことは、安心で安全な「総合栄養食」を選んで購入することではないでしょうか。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です