猫ウイルス性鼻気管炎(FVR)
猫ウイルス性鼻気管炎の病態と症状
「猫ウイルス性鼻気管炎」とは、ヘルペスウイルス科に属する猫ヘルペスウイルス1型(FHV)を原因とする上部呼吸器感染症です。「猫インフルエンザ」「猫コリーザ」と呼ばれることもあり、猫カリシウイルス感染症を併発した場合は、両者を合わせて「ウイルス性呼吸器感染症」と呼ぶこともあります。
ウイルスが涼しい所を好むため、外気にふれて比較的体温の低い、目・鼻・口などに症状が出るのが特徴です。
全てのネコ科動物が猫ヘルペスウイルス1型に対する感受性を持っています。
また、ドイツにおいては、ライオンの致死的な脳炎の原因となった先例があります。
猫ウイルス性鼻気管炎は、2~10日程度潜伏期間があり、以下のような症状を示します。
子猫や老齢猫など比較的免疫力の弱い猫などは肺炎を併発することもしばしばあります。
また妊娠中の猫が感染すると流産する危険性もあります。
猫ウイルス性鼻気管炎の主症状
- 食欲不振
- くしゃみ
- 咳
- 鼻水
- 口内炎
- 鼻の穴付近のヘルペス性皮膚炎
- 発熱
- 角膜炎・結膜炎
- 涙が増える
- 目やにが増える
猫ウイルス性鼻気管炎の原因
猫ウイルス性鼻気管炎の原因としては、主に以下のようなものが考えられます。
予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。
猫ウイルス性鼻気管炎の主な原因
接触感染
猫ウイルス性鼻気管炎は、ウイルスに感染した猫の鼻水やよだれなどから接触感染します。
くしゃみによって飛び散ったツバ、猫同士のグルーミング、母猫から子猫、食器の共有、
感染猫に触れた人間が他の猫に間接的に触れることでも感染する場合があります。
また症状を見せていない猫でも、感染歴のある猫は三叉神経(脳から顔に伸びる神経)の節の中に
ウイルスを保有していることがありますので感染源として重要です。
猫ウイルス性鼻気管炎の治療
猫ウイルス性鼻気管炎の治療法としては、主に以下のようなものがあります。
猫ウイルス性鼻気管炎の主な治療法
対症療法
猫ウイルス性鼻気管炎の治療には特効薬はありませんので、現れた症状に対する対症療法が治療の基本となります。
二次感染を予防するために抗生物質を投与し、あとは猫の自然治癒を待ちますが、通常は2週間以内に回復します。
脱水症状を防ぐため、飲み水が切れないように注意し、栄養補給と温度管理にも気をつけます。
また最近では免疫力を高めるネコインターフェロンを投与することもあります。
ワクチン接種
猫ヘルペスウイルスにはワクチンがあり、最も一般的な「三種混合ワクチン」でカバーされています。
しかしヘルペスウイルスには、インフルエンザのようにいくつか型があり、ワクチンを打っても稀に感染する事があります。
ただし、あらかじめワクチンを打って体内に抗体を作っておけば、比較的軽状でおさまることが多いようです。